19 June 2008 / Thursday

先生と小津

Filed under: Film / Cinema — argyle street tea room @ 10:53:51

40も歳がはなれた年上の友人がいる。友人というと本人に叱られるだろうけど、いつもは「先生」と呼んでいる。なぜ、先生かは割愛するとして、前に勤めていた会社からだからもうながいつきあいになる。
昨日、その先生に久しぶり逢った。たまたま近くに仕事で寄る機会があったから、菓子折りも持たず、急の無礼を承知で先生の大きな家に押し掛けた。
最近は脚が弱くなってしまって、一緒に飲み歩くこともできなくなっていた。
ぼくがいまより若い頃、先生にはたくさんいろんなことを教えてもらった。横浜の野毛、関内、ジャズ、珈琲、酒の飲み方、叱り方、ひととのつきあい方、スジの通し方。
先生とは事務所を抜け出し伊勢佐木町の名画座にときどき出かけた。古いリバイバル映画を観るためだ。ぼくにとっては古い映画だけど、先生にとっては青春時代に観た甘酸っぱい映画になる。
「黒澤はダメだ、小津が素晴らしい。」これは、先生の口癖だった。だから、小津安二郎の作品ばかり一緒に観ていた。そして、その映画について語り合った。ジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダース、アッバス・キアロスタミらが小津映画への敬愛を口にしていたことや、その関係性を先生に説明するのがとても骨が折れたのだけれど。

「私は彼の映画に世界中のすべての家族を見る、私の父を、母を、弟を、私自身を見る。我々はそこに自分自身の姿を見、自分について多くの事を知る。」
ヴェンダースは「東京画」の中で、小津への最大級のオマージュを込めこう語っている。
「おれは、ありふれた家族の映画が好きなんだなあ。そして、自分に置き換えてみるんだ。」先生も良くこんな風なことを云っていた。照れながらそう語る時の先生の顔がぼくは好きだった。
先生の家の居間には、新しく大きな 42インチの AQUOS の液晶テレビがあった。こんどは、ぼくらふたりの大好きな「東京物語」の DVD を菓子折りの代わりに持って行こうと思う。

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